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【ネタバレ感想】『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』評

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』には幼年期への憧憬を感じざるを得なかった。

 

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それはムーニーをはじめとする子供たちにとって、貧困という現実さえも冒険でしかないからだ。なぜなら廃墟と化した空き家に散乱する瓦礫を幽霊のウンコだと言ったり、かかった虹の麓には妖精が金を隠していると信じていたりと、止め処ない想像力の源泉を持ち合わせている為である。つまり、辛さを知らされるものが一切存在せず、不安もなしに、いくつもの見通しが許されるからこそ、やはり、幼年期は魅惑に満ちたものに思える。

 

しかし、放火という行為によって、そのイノセンスは喪失していく。スクーティとの絶交、ヘイリーの売春、児童家庭局の介入と、容赦ない現実が光明のない運命へと委ねさせ始める。だからこそ、ムーニーはどうしようもなく泣き出してしまうのだ。

 

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ジャンシーはムーニーの涙の理由など知る由もなかっただろう。

しかし、そのただ泣いているムーニーの別れの言葉に疑問を持つ。

思考ではなく、感性によって!

 

だから「フロリダ・プロジェクト」のダブルミーニングとして、”低所得者向けの公共住宅”から”ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート”へと、ジャンシーはムーニーの手を引いて行くのだ!

 

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その子供たちの感性による詩的反抗。

 敢えて『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』に於ける大人について言及はしない。

なぜなら我々は”Man Envy Children/子供に憧れる大人”でしかないのだから。

 

思い返してみれば、冒頭の、子供の悪戯と共に流れるのはクール&ザ・ギャングの「Celebration」ではないか。

 

お祝いだ。

君のためのお祝いだ。

素晴らしい時を祝おう。

さあ!

 

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 魔法は存在した。

それは子供たちが、子供たち自身の救済あるいは破滅にむかって、今も走り続けているように。

どちらにしろイノセンスの大勝利でしかない。