Club Silencio

夢と現実の魔境からお届け

『ワンダー 君は太陽』評

ジョゼフ・メリックは散文詩を詠む。

 

私の姿がどこかおかしいのは事実だ。

しかし、私を咎めることは神を咎めることだ。

もしも、私が自分を創りなおすことが出来たならば、私はあなたを落胆させはしないだろう。

 

もし私が巨大で塔に触れることが出来たとしても、あるいは手のひらで海を掴むことが出来たとしても、私は精神によって測られるべきである。

 精神こそが、人間の物差しなのだから。

 

 オギーは、決して同情されたのではない。

彼の精神が賞賛されるに値し、必要不可欠な存在となっているのだ。

つまり、"障害を持つ人を受け入れた"のではなく、むしろ彼に依存してしまっていると言えるだろう。

 

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ああ!君は太陽

 美醜で人間の価値を決めつける者たちの眼を焼いてしまえ。

 

そうしてビー・ミラーが「Brand New Eyes」で歌うように言うだろう。

 

It's like I got brand new eyes,

まるで新しい瞳に変わったみたい

 

 and I can finally see.

やっとこの眼で見ることが出来る

 

What has always been right there in front of me

いつも目の前にあったのに掴みとれなかったものが

 

And with these brand new eyes I'll take in everything

この瞳があれば世界がなんでも受け入れられる気がする

 

And I will finally see me

そしたら本当の私が見れるはず

 

I can finally see

やっと見えるの

 

I can finally see it

やっとこの眼で見れるはず

 

あなたは奇跡(wonder)の子だ。

自由と尊厳と権利が平等にあり、

また理性と良心を授けられた同胞の精神として、

偏見や差別に立ち向かう。

 

これをペスト菌と言うのならば、もっと感染するべきだ。

平和のためのパンデミック!!

 

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結語はデヴィッド・リンチの『エレファント・マン』を引用したい。

 

決して…

決して死ぬことはない

 

川は流れ

風は吹く

 

雲は流れ

心臓は鼓動を打つ

 

すべては永遠に続く

【ネタバレ感想】『万引き家族』評

私たちは死の心配によって生を乱し、生の心配によって死を乱す。

 

ゆりを迎え入れた柴田家に夏が訪れる…

 

治と信代のセックス。
亜紀と4番さんとのセックス。
第二次性徴を迎えた祥太の勃起。

 

このように家族の"生"が安定し始めた矢先、

その大黒柱である初枝に"死"がやって来る。

 

つまり、生の心配を止めるということは、死の心配を止めるのに等しいが故に、初枝の死は、家族へと生の心配を促すものに思える。

 

そうした生の心配によって死を乱すのは、紛れもない祥太であった。

 

気付いてしまったのだ。
この万引きをする生活に未来はあるのかと。

 

そうした死の心配によって生を乱すのは、変わらず祥太のみである。

 

気付いてしまったのだ。
万引きを手伝うようになったゆりに未来はあるのかと。

 

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だから祥太は柵を飛び超えた。

心配だから「わざと捕まった」のか。

 

初枝は塀の中に。

亜紀は門を潜る。

治は扉が閉まる。

 

そして、ゆりは柵の上から外を眺める。

なぜ、ふいにビー玉を数えるのを止めたのか…?

 

心配してしまったのか!

気付いてしまったのか!

 

頼む、ゆり。

その柵を飛び越えてくれ!

 

死にはしない。

頭も打たず、軽い骨折で済むはず。

 

だからお兄ちゃんのように、その柵を飛び越えくれ!

その玄関の中に引き戻される前に…

 

ただ実際そうさせるべきではない。

心配させるべきでも、

気付いてしまわせるべきでも、

飛び越えさせるべきでも。

そして、万引きをさせるべきでも。

 

日本の恥だとか、

犯罪を助長させるとか、

そう言う前に、我々にもっと出来ること、伝えることがあるのではないだろうか?

 

そうして子供たちを救うべきだ。

 

つまり、『万引き家族』はそうした心配事に気付かせてくれる映画ではないだろうか?

エル・ファニングと『マレフィセント』について

エド・シーランは『Perfect』でこう歌っていた。 

 

I have faith in what I see

目に見えるものを僕は信じる

 

Now I know I have met an angel in person

僕は出会ったんだ 人の姿をした天使に

 

And she looks perfect

彼女の姿は非の打ちどころがない 

 

 ”人の姿をした天使”と称される彼女とは誰か?

 知っている限りでは、エル・ファニングしかいない。

 

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アイ・アム・サム』でダコタ・ファニングの幼少期を演じ、銀幕デビュー。

ドア・イン・ザ・フロア』では、ジェフ・ブリッジスキム・ベイシンガーと共演し、5歳ながら勝るとも劣らない演技を見せる。その同年には『となりのトトロ』の英語版でメイの声を吹き替えた。

 

歯抜け状態での笑顔に、ぎゅっと抱きしめたくなるような可愛さは異常。

 

youtu.be

 

 それからアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥの『バベル』やデヴィッド・フィンチャーの『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』やソフィア・コッポラの『SOMEWHERE』など、賞レース候補作品へと出演。そしてJ・J・エイブラムスの『SUPER8/スーパーエイト』で一躍有名となる。

 

天才子役はアイドルとなった。

 

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そのアイドルは『マレフィセント』でまさにプリンセスとなる。

妖精に育てられたオーロラこそ、最も”人の姿をした天使”に近いと言えるだろう。

 

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しかし、姫には受難が待っていた。

 

アバウト・レイ 16歳の決断』では腋毛を生やし、

ネオン・デーモン』では嫉妬の果てに喰われ、

20センチュリー・ウーマン』では淫語と放尿、

パーティで女の子に話しかけるには』では吐瀉、

The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』を迎えた時には…

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だからマレフィセントは「16歳の誕生日の日没までに糸車に指を刺され死の眠りにつく」という呪いをかけたのに…

 

そうしていたら『マレフィセント 2』の撮影が始まったらしい!!!! 

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受難を経て、

エル・ファニングが”人の姿をした天使”として復活する。

 

彼女も20歳となったが、

いつまでも天才であり、

いつまでもアイドルであり、

いつまでもプリンセスであることを願いたい。

 

一ファンとして、応援という名の呪いをかけ続けようではないか!

【ネタバレ感想】『ファントム・スレッド』評

レイノルズは近頃、気持ちが不安定だと漏らす。

それは母親の幽霊に怖がっているのではなく、ただひたすらに恋しいのである。

 

そんな彼が母親の遺髪を縫い込んだ背広を着て、別荘近くのレストランを訪れると、ウェイトレスをしていたアルマという女性に一目惚れをする。しかし、彼女自身ではなく、その完璧な身体に恋をしたのだ。

 

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それは仕立て屋のレイノルズにとって、服を作ることこそが性的な行為に他ならないからだ。布に手を這わせるという愛撫。縫い針を通すという挿入。つまり、アルマはドレスを型取るためのマネキンでしかない。

 

そうしてハウス・オブ・ウッドコックに連れてこられた彼女にしてみれば、どうしようもなくもどかしいだろう。直接的な触れ合いを望むが、オートクチュールのドレスを介さなければ、コミュニケーションさえ取れない。

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だからレイノルズとアルマは生理的に相性が悪い。

 

それでも惹かれあってしまうから仕方がない。

着飾るように偽りながら、アルマはレイノルズの性のユートピアに住まう。しかし、女性がめくるめくように彼のドレスを求めてやって来るのを見ていれば、彼女が嫉妬に狂うのは時間の問題だった。

 

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ならば、毒を盛ってしまおうではないか!

あなたの自由を奪って、

あなたを感じるために。

 

弱ったレイノルズは赤子のようだ。

それは母親の不在に嘆き切った末の姿と言えるのか。

そこへアルマは優しく看病をする。

それは望んでいた彼との触れ合いだと言えるだろう。

 

つまり、結果として、毒を盛ることで2人の利害は一致していくのだ。

 

そして、アルマはこう言う。

「あなたには無力で倒れていてほしい」

 

夫婦となった彼らは、そうして実質的な初夜を迎えることになった。

 

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そのようにして男女の関係に於ける悪夢的体験と白昼夢的体験が、惑乱的な反転を見せる。それが映画の快楽の芯としてあるからこそ、とろけるようなラブストーリーに昇華していくのだ。まるでフライパンの上で焼かれるバターのように…

 

ファントム・スレッド』は生ぬるい恋愛とは一線を画すが、あんな恋がしてみたい!

 毒キノコ入りオムレツをたらふく食べて、ドレスを縫おうではないか!

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【ネタバレ感想】『ゲティ家の身代金』評

ジャン・ポール・ゲティはアビゲイルチェイスの決断によって真実を告げられる。

 

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それは愛の価値が"All the money in the world/世界のすべての金"に勝るということ!

そうしてゲティは生き急ぐように、愛を金で買おうとする。つまり、身代金を払うのだ。 

 

しかし、時すでに遅し。
気付けば、忠実だった執事の姿さえ見えないではないか。どれだけ金が稼げても、愛に対する取引にはめっぽう弱かった。残されたのは、彼にとってもはやただの紙切れでしかない。

 

悪夢に魘されて起きた彼は、アルブレヒト・デューラーMadonna of the Pearを壁から外す。

 

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もう人肌の温もりは感じられないのかもしれない。そこにあるのは北方ルネサンスで描かれた母子の姿だけ。だからこそ叶えられなかった愛の形を想い込め、絵画を抱いて眠ろうではないか、永遠に…。

『イット・フォローズ』短評

大人になるのは怖い。

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色々と悪い前兆が重なっていき、

譲歩して、

破棄して、

無限の可能性を秘めた自由は行き先を見定めていく。

 

それなりの責任を負いながら、

大人になってしまった今どこへ行けばいいのか?

   

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最悪の苦痛はあと1時間、あと10分、あと30秒で、

そして今この瞬間に魂が肉体を離れ、人でなくなると知ること。

 

この世の最悪は、”それ”が避けがたいと知ることだ。

 

つまり、大人になるとは”死”を意識し始め、また恐怖することである。

 そうするうちに人は目を閉じて、最後の瞬間を待ちたがるものだろう。 

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しかし、例外的状況がある。

それは人間が”愛”という高みにいる場合だ。

 

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 目を閉じてしまう貴方の手を引こうではないか。 

その推進力に、”それ”は憑いてこれないだろう。

『アメリカン・スリープオーバー』短評

幼年期が恋しい。

あの日常がどれだけ素晴らしかったことか。

 

毎朝、不安もなしに出かけていった。

毎晩、決して眠ろうとはしなかった。

 

しかし、大人の真似事をするうちに全てを忘れていく。

冒険を期待して大人へと急ぐのだ。

 

後で気づいても二度と戻れないのに。

 

だからこそ『アメリカン・スリープオーバー』は青春の神話であった。

それは神話の一定義として、”青春に於ける行動規範”を可視化させたからである。

 

つまり、揺蕩う水が流れ出すように、眠っていたものが目を覚ますように、 いつでも、どこでも、だれでも、『アメリカン・スリープオーバー』を媒介して、お泊り会は開催される。

 

そこでは、

プールで目が合ってしまったり、

ドラッグストアで一目惚れしたり、

スキャンダラスな日記を読んでしまったり、

懐かしい写真を見つけたり、

あるようで、無いような未知への郷愁が、不可侵で従わなくてはならないものとして意義づけられている。

 

そうして幼年期を現行として、また追体験した者たちは眠ることのできないお泊まり会へと参加していくのだ。

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